というわけで、結婚してください!
「このままでは仕事に差し支えるし。

 うっかり泉美様になにかしようものなら、クビになってしまうしな」

 いや……、しなきゃいいんじゃないですかね?
と思って見ていると、泉美たちに窪田が近づき、なにやら、おべんちゃらを言っているのが見えた。

 泉美の機嫌は良くなったが、どうやら、和音の機嫌を損ねたようだ。

「あーあ。
 今度は、和音様に目をつけられたみたいですよ。

 いい男も大変ですねえ」
と自分がけしかけたくせに、数志は他人事《ひとごと》のように言って、笑っている。

「じゃ、俺は征様を迎えに行ってきますよ。
 もう到着されるはずですから」
と言って数志は居なくなってしまった。

 鈴も一度、近くのヴィラへと引っ込む。

 そこが花嫁の控室になっていたからだ。

 いつぞや二人で泊まったあのヴィラだ。

 ……いや、尊は隣のヴィラに泊まったんだったが。

 尊さんのあの莫迦正直なとこが好きだな、と思ったとき、ざわついていた外が静かになった。

 式が始まるようだ。

 新郎が到着したのだろう。
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