というわけで、結婚してください!
「鈴」
とノックの音と晴一郎の呼ぶ声が聞こえた。

 はい、と鈴は立ち上がる。

 父と腕を組み、外に出る。

 祭壇の前には新郎が鈴を待っていた。

 二人の新郎が――。

 白いフロックコートの新郎と、黒いフロックコートの新郎が鈴を見ている。

 黒のフロックコートの新郎は、此処まで来て、俺と結婚せねば、斬るっ、という顔をしているし。

 白のフロックコートの新郎は、俺と結婚せねば、縛って吊るすっ、という顔をしている。

 いっそ、牧師さんを選ぼうかと思ってしまった……。
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