というわけで、結婚してください!
 バージンロードは今まで家族と歩いてきた道。

 あのときは涙ぐんでいるだけだった晴一郎が何故か号泣しながら、鈴を送ってくれる。

 お、お父さん、心配で旅立てないんですが……と思う鈴に、晴一郎は、さあ、行くがいいっ、という顔をして、手を離した。

 鈴はひとり、白いバージンロードを数歩、歩いた。

 二人の新郎の後ろに湖が見える。

 夕陽に照らし出されたその湖に昨夜の夢を思い出していた。

 夢の中で、美しい湖から現れたぽすが言うのだ。

「お前が落としたのは、このホンモノの新郎か?

 ニセモノの新郎か?」

 残念なことに、ぽすの声は、晴一郎の声だったが。

 人形劇の吹き替えのようだ……と思う鈴の前で、何故か腕だけ、筋骨隆々としたぽすが、片手に征、片手に尊を乗せ、

「さあ、どっちだ?」
と訊いてくるという悪夢でうなされたのだが――。

 今、ぽすはおとなしく、母親と座っていて、湖から現れ出そうにはなかった。

 だが、二人の新郎を前に、鈴は言う。
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