というわけで、結婚してください!
 


 笛を吹く鈴に連れられ、釜を持って諸国漫遊した尊は、目を覚まして会社に向かった。

 ぽすと鈴に見送られて。

 デスクに戻ると、本社から送られてきたFAXが置いてあったので、それとイベント会社からの電話の内容をメモした紙を持って、支社長室に行く。

 報告を終えたあとで、田上が言ってきた。

「同じ顔だが、お前はあの弟とは少し違うようだな」
と。

「……支社長は、征と直接会って話されたことがあるんですか?」
と訊いてみた。

 大きな組織だと、上の人間の顔など見たことがないという場合も多いのだが――。

「あるよ」
と素っ気なく田上は言ってきた。
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