というわけで、結婚してください!
 そのとき、近くに居た社員の人たちが、征の方を見ながら、ひそひそ話しているのが聞こえてきた。

「征さんが来てらっしゃるぞ」

「今度、専務になるらしいな。
 やっぱり、あっちが跡継ぎで決定なのか?」

「それにしても、わざわざおいでになるなんて、余程、この新商品に期待をかけてるんだな」

 頑張ろうっ、みたいな感じで盛り上がっている。

「……いや、新商品見に来たんじゃない気がするが」
と言う尊の声が近くでした。

「逃げた花嫁見に来たんですよね~。
 新婚夫婦がもめてたりしたら、横から奪い取ろうと思ってー」
とズバッと言って数志は笑う。

 征は相変わらず、表情ひとつ変えずに、尊に話しかけていた。

「いろいろトラブルがあったようだが、よくやったな、尊」

「なんで上からだ」

「……上からでいいだろうが、今は俺の方が立場が上だ」
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