というわけで、結婚してください!
 鈴が、二体まとめて、ぎゅーっとしたいっ、と思ったとき、後ろでよく響く笑い声がした。

 怪盗が現れたのかと思った……。

 そんな感じにハリがあって、存在感のある笑い声だ。

「みなさん、お楽しみいただけてますかな」

と言いながら、恰幅のいい紳士っぽい男が現れた。

「いやあ、征さん。
 わざわざ、こんな場所まで来ていただいて申し訳ないですな」
と征に向かって言うその男は、言葉はへりくだっているのに、全然へりくだっている感じがしない。

 どうやら、噂の田上支社長のようだった。

「あっ、夢の通りですっ」

 思わず、そう叫んだ鈴の口を尊が後ろから塞ぐ。
< 461 / 477 >

この作品をシェア

pagetop