というわけで、結婚してください!
「うたた寝をすると……

 いつも悪い夢を見るんです」
と天井を見ながら、鈴は言った。

「でも、今、目を覚ましたら、尊さんが居たので、今日は幸せな気持ちになりました。

 よくわからないけど。

 結婚って、こういうことなのかなーって思いました」

 うまく言葉には出来なかったのだが、尊には伝わったようで、
「そうだな」
と言ってくれた。

 しかし、尊は指を二本、鈴の方に向けて言う。

「だが、この結婚には、ふたつ、大事なものが欠けている」

「え?」

「ひとつは、婚姻届」

 そう言われ、あっ、と鈴は声を上げた。

「……そういえば、出してませんでしたね」
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