というわけで、結婚してください!

 わかるかっ、と思う鈴に、尊は、
「朝風呂に入るんじゃないのか、早くしろ」
と笑って言ってきた。

 ま、まあ、朝の光を浴びながらあのお風呂に入るのは素敵でしょうけど、と思ったとき、誰かが、入り口の扉をノックした。

 はい、と鈴が振り向くと、尊は警戒したようにそちらを見る。

 追っ手が来たかと思ったのだろう。

 だが、
「失礼します」
と入ってきたのは、支配人の窪田だった。

 手に何故か大きなピクニック用のバスケットをさげている。

「尊様、鈴様。
 そろそろお帰りください」
とテラスに出た窪田は言ってきた。

「ご朝食はバスケットに詰めておきました。
 そろそろ征様が気づかれて、追っ手がかかる頃です。

 うちの車をお使いください。
 普通のセダンなので、わかりにくいはずです」
とこの有能な支配人は言ってくれる。
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