というわけで、結婚してください!

 


 尊たちがバスケットを手に、ホテルの前に行くと、よく路上で見かける感じの白のセダンがとめてあった。

「では、お気をつけて」
と従業員一同が並んで見送ってくれる。

 いや~、目立たないように現れて、目立たないように去ろうと思ってたんですけど、と思いながらも、ちょっと嬉しかった。

 エンジンをかけた尊が、窓を開け、
「ほら」
とホテルのアンケートを窪田に渡している。

 細かい字で、びっしり書かれているそれを見て、窪田が笑った。

「あっ、私も書きましたっ」
と鈴も慌てて、アンケート用紙を手渡した。

 大きな字で、
「ありがとうございますっ」
「最高のホテルですっ」
 などと書かれているそれを見た尊が鼻で笑って言う。

「莫迦だな。
 忌憚のない意見を述べなきゃ役に立たないだろうが」
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