というわけで、結婚してください!

 今は転勤ということで、ちょうど休みがもらえているが、出向先に行くべき日に行かなかったら、ああ、やっぱり、飛ばされてきたようなお偉いさんはやる気がないんだな、と思われてしまうだろう。

「一応、忠告です。
 じゃ、もう帰りますね。
 あんまり長居すると、まずいんで」
と立ち上がると、鈴が何故か、

「えっ? もう帰っちゃうんですか?」
と言ってくる。

「……居て欲しいのか」
と尊が睨んでいるが。

 たぶん、鈴は二人だけで逃げているのが心細かったのだろう。

 いや、一応、敵なんだが、と思いながらも、すがるように見られて、ちょっと嬉しかった。

 なので、うっかり、更に仏心を出してしまう。

「征様には、こっち方向に逃げたらしい、とだけ報告しとくんで。
 早くどうするのか決めてくださいよ」
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