絶対俺の嫁にするから~御曹司のイジワルな溺愛包囲網~
彼が磯部さんのことを褒めるたびにムカムカは増していく。

だめだ、これ以上話を聞きたくない。

「すみません、上杉さん。父に呼ばれて……切りますね」

『あ、あぁ。わかった。ごめんな、遅くまで。……おやすみ』

優しい声で『おやすみ』と囁く彼の声を聞き、「おやすみなさい」と言ってすぐに通話を切った。

通話の切れたスマホを胸の前で握りしめ、そのまま仰向けになった。

「なにやっているんだろう、私……」

静かな部屋に漏れた声。

お父さんは出張でいないのに、呼ばれたなんて嘘をつくなんてどうかしている。

でもあれ以上、上杉さんが磯部さんの話をするのを聞いていられなかった。

磯部さんは上杉さんの秘書だもの、信頼していて当たり前じゃない。むしろ信頼していなかったら問題だと思うし。

頭ではそうわかっているのに、心が落ち着かない。

この日はなかなか寝付くことができなかった。
< 115 / 272 >

この作品をシェア

pagetop