絶対俺の嫁にするから~御曹司のイジワルな溺愛包囲網~
お母さんはお母さんなりに、私の幸せを考えて上杉さんのことを勧めてくれているんだと思う。

だからこそ強く言い返せなんだよね。私は彼と結婚なんてするつもりはないと、断ることさえできない。……まぁ、それは今に始まったことじゃないけど。

静かな室内で深いため息をひとつ零す。

今日だって本音を言えば上杉さんと出掛けたくない。お見合いだってしたくなかった。

言えない自分が情けないし、両親に本音を言えないのもおかしな話だと思う。

でも昔からこうだった。……両親と言われても、ずっと離れて暮らしていたし、高校生になるまで祖母に育てられたようなもの。

だからこうして一緒に暮らし始めても、どこか他人と暮らしているような気がしてしまう。

それに大学や就職先は、私の進みたい道に進ませてもらったからこそ余計になにも言えないのかもしれない。

考えれば考えるほど自分が情けなくなる。

がっくり肩を落とすと、両手にバッグやアクセサリーケースを手にしたお母さんが戻ってきた。
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