絶対俺の嫁にするから～御曹司のイジワルな溺愛包囲網～
さっきまで硬い表情だった磯部さんは、困惑している。でも私を見ると、再び鋭い眼差しを向けた。

「有坂さんにはわからないでしょうね、私の気持ちなんて。……上杉部長は、将来この会社のトップに立つ人なのよ？　……あなたみたいに家柄のある人とは違うの。私の家はごく普通の一般家庭。そんな私が上杉部長と結婚なんて、できるわけないじゃない」

彼女の悲痛な思いに胸が苦しくなる。

私も大きくなるにつれて、将来は両親が決めた人か、同じようにどこかの会社の息子と結婚すると思っていた。
でもおばあちゃんたちを見て、そんな未来は嫌だと思った。普通の結婚がしたいって。

だけど結局好きになったのは、両親が気に入っている取引先の上杉さんだった。だからこそ磯部さんに伝えたい。

「私はそんなことないと思います」

自分の考えを伝えると、磯部さんは呆れた顔を見せた。

「あなたはそうでしょうね」

そして皮肉を言う彼女の声に被せた。

「私はずっと同じ世界の人ではなくて、ごく普通の人と結婚したいと思っていました。それが私の夢だったんです」

「……嘘でしょ？」

呆気にとられる彼女に必死に伝えていく。
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