絶対俺の嫁にするから~御曹司のイジワルな溺愛包囲網~
「私……昔ね、本当はこうしてお母さんと並んでキッチンに立って、いっそに料理をしたかったの」

「えっ?」

驚くお母さんに昔伝えられなかった思いを伝えていく。

「でもお母さん、私のために一生懸命作ってくれていて、言い出せなかった。……だけどこれからはちゃんと言うから。思っていること、自分がしたいことを全部お母さんとお父さんに伝える」

「麻衣子……」

すぐには無理かもしれない。やっぱり躊躇しちゃう時もあるかもしれないけど、少しずつでいいから、変わっていきたい。なんでも言えるようになりたい。

私の幸せを願ってくれていたお母さんには、本音をいつも伝えていきたいと思うから。

正直な気持ちを伝えたはいいものの、照れ臭くなる。キッチンに視線を向けると、野菜や肉が置かれていた。

「えっと、野菜切るね」

人参と玉ねぎを手に取り皮を剥いていると、お母さんは声を震わせた。

「ごめんなさいね、麻衣子」

「――え」

隣を見ると、お母さんは大粒の涙を流していた。
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