絶対俺の嫁にするから~御曹司のイジワルな溺愛包囲網~
「え、やだどうしたの、お母さん?」

手にしていた野菜を置くものの、涙を流すお母さんにどう接したらいいのか困り果てる。
するとお母さんはエプロンで涙を拭いながら、話し出した。

「よく思春期には反抗期があるっていうでしょ? でも麻衣子にはなかった。……聞き分けが良くて真面目で、自慢の娘だったわ。でもそれはお母さんが、麻衣子のことをしっかり見ていなかった証拠ね。ごめんなさい、麻衣子。本当は私たちに言いたいことがあっても、言えなかったんでしょ?」

「それは……」

口籠るとお母さんは察したのか、唇を噛みしめた。

「本当にごめんなさい。……これじゃ母親失格ね」

そう言うとお母さんは、「顔を洗ってくるわ」と言い、逃げるようにキッチンから出ていった。

「あっ……」

手を伸ばすものの、お母さんは廊下に出て洗面所へと向かった。ドアが閉まる音が虚しく響くだけ。

なにやっているんだろう、私。どうしてすぐに言わないの? 「母親失格なんかじゃないよ」って。
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