絶対俺の嫁にするから~御曹司のイジワルな溺愛包囲網~
「えっ?」

「いいからおいで」

照れ臭くなりながらも、お母さんの近くに椅子ごと移動すると、身体を抱き寄せられた。

お母さんの優しいぬくもりに包まれて、やっと大丈夫なんだって安心できた。
まるで幼い子供をあやすように、お母さんは私の髪を撫でていく。

おかしいな、お母さんが目を覚ましたら話したいことがたくさんあったはずなのに、こうされていると言葉が思い浮かんでこない。

されるがままでいると、お母さんはクスクスと笑いながら言った。

「心配かけて申し訳なかったけど、倒れていいこともあったわ」

「え……いいこと?」

お母さんから離れて顔を見ると、ニコニコ笑っている。

いいことってなにがあったのだろうか。

不思議に思っているとその理由を話してくれた。

「ごめんなさい、実は昨夜……お母さん目を覚ましていたのよね」

「昨夜って……」

「岳人君が来た頃から」

声を被せて言うお母さんの話に目が丸くなる。

「嘘っ!?」

「本当」

え、じゃあなに? お母さんは上杉さんが来てからずっと起きていたってこと?
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