絶対俺の嫁にするから~御曹司のイジワルな溺愛包囲網~
「こちらを上杉部長にお渡しください」

「はい、わかりました」

彼女から封筒を受け取る。これで私の任務は完了だ。

なにか言いたい気持ちになるも、思い留まる。なにを言ったってこの前のように磯部さんを不快にさせるだけ。

「ありがとうございました。ではこれで」

踵を返し部長室から出ようとした時、ふいに声が掛けられた。

「私は有坂さんとは違うから」

「――え」

すぐに振り返り見ると、磯部さんは真っ直ぐ私を見つめていた。

「気持ちを伝えないことに後悔はしない。……想いを伝えずに、相手の幸せを願う恋愛もあってもいいと思うから」

そう言うと磯部さんは、少しだけ表情を崩した。

「悪いけど、気持ちが消えるまで勝手に好きでいさせてもらうから。もちろん仕事はこれまで通り完璧にやるわ。彼の信頼を失いたくない、私のプライドなの」

「磯部さん……」

彼女の上杉さんに対する深い想いに、気持ちが大きく揺れる。

私は誰かを好きになったのは上杉さんが初めてで、この先も生涯彼ひとりだけでありたいと願っている。
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