イケメンエリート、はじめての純愛⁇
咲子はテラスから部屋へ戻ると、テーブルに置いているはずの伝票を探した。
映司が支払いを思い出す前に、こちらの方で精算したいと思ったから。
でも、あからさまに伝票を探す事もできず、挙動不審者のようにキョロキョロする始末だった。
きっと映司さんからしたら私の行動は全く理解できないはずと、内心焦りながら。
咲子は伝票が見当たらないせいで切羽詰まってしまい、お店の人を探しに部屋の外へ出た。
そんな咲子の後をそろりと付いてきている映司の事に、全く気付く事もなく。
「……あの、すみません、あの~」
深紅のベルベッド地の絨毯がぎっしりと敷き詰められた廊下には誰もいなかった。
咲子はそれでも、廊下の先の方へ向かって遠慮がちに叫んだ。
「あの、すみません…」
「はい、何でしょうか?」
そう声をかけてくれたのは、後ろに立っていた映司だった。
「何でしょう? お嬢様。
用事があるのなら、僕に何なりと申し付けください」
咲子はガクッと肩を落とした。
どうやらこの空間には咲子の映司の二人だけらしい。