好きって言わせたい〜恋に臆病な彼が本気になったら、溺愛がとまりません〜
彼に差し出した紙袋に、有名なお菓子店のクッキーを入れて返した。
「…気を使わせてごめんね。ありがとう。後で頂くよ」
「こちらこそ、お世話になりました」
なぜか、私の頭を撫でる手に頬が染まる。
後ろの女子高生が「きゃーきゃー」騒いでいる。
「オーナーの彼女?」
「えー、ショック」
「うそだー」
やはり、目の前の男性にも女子高生達のファンはいたらしい。
「その人、オーナーの彼女ですか?」
勇気ある女子高生の一人がたずねると、口元に人差しを立て「内緒」と口元だけ動かした。
うわっ、その仕草、計算ですか?
たまりません!
そう思ったのは後ろの女子高生達も一緒だったらしく、女子同士抱き合い悶えている。
この人、ひとたらしだ。
そうやって、お客さんを捕まえているのだ。
徐々に女子高生が帰って行き、お客は私だけになる。頼んだブレンドコーヒーもなくなり、そろそろ帰ろうとした。
「もう、帰るの?」
「はい。ごちそうさまでした」
レジにいた奏多くんに支払いを済ませて、もう一度お礼をいいお店を出てすぐに、男性は名刺をひとつ持って追いかけてきた。
「自己紹介まだだったよね。今度来る時は君の名前を教えてね」
名刺には、神崎 透 cafe[lodge]のオーナーと書いてあった。