好きって言わせたい〜恋に臆病な彼が本気になったら、溺愛がとまりません〜

オオカミにも情はあるらしい


机の上に無造作に置かれているスマホからアラームがなった。

「さて、仕事してくるか」

タバコの火を消し、そえ付けの鏡を見ながら服装を整えていく彼につられて、私も気怠い体を起こして服を直した。

なぜか、私を見てクスッと彼は笑う。

「まだ、体怠いんだろ…」

頭を撫でて「ちょっと待ってろ」と、出で行った。

しばらくして戻ってきた手には、冷たい炭酸水のボトルがあり、一度、封を切ってから締め直して渡してくれた。

力の入らない今の私には、ちょっとした気遣いが嬉しい。

「ありがとうございます」

「後でご飯ごちそうするけど、食べる?」

「…いいんですか?」

「まぁ、わざわざ律儀に支払いに来てくれたし、あの女がぶつかっていったお詫びも兼ねて作るよ」

「さっき、私に自分が悪くないのに謝るのやめたらって言っていたのに、神崎さんがお詫びするんですか?」

「俺が怒らせたせいだし」

あの時の表情は、それだけじゃない気がするけど…

「じゃあ、ごちそうになります」

「うん、良い返事。じゃあ、体が動くようになったら、お店においで」

「はい」

爽やかに笑いドアを閉めて行ってしまった。

なんなの…あの笑顔。
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