好きって言わせたい〜恋に臆病な彼が本気になったら、溺愛がとまりません〜
爽やかな笑顔で、目が全く笑っていない神崎さんがそこに立っていた。
「チッ、オーナーこそ、そのお客に手を出したくせに」
「くせに…なにかな?」
うわっ、笑顔が薄っぺらい。
「別になんもないすっ」
「ないなら、洗い物、片付けてきて」
にこりと笑っているが、その笑顔は恐怖でしかない。
陸くんという彼が奥へ消えていくと、通常の爽やかな笑顔に戻っていた。
「お待たせ…今日はナポリタンに唐揚げとサラダのプレートだよ」
「わぁー、美味しそう。いただきます」
食べ始めると、またカウンターに頬杖をついてこちらを見ている神崎さんに、「見られてると食べにくいです」と言うが、「美味しそうに食べてくれるから、ついね」と返ってくる。
そして、私の頭を撫でて「ゆっくり食べてて」と言って、少し離れたところでタブレットの画面を操作している。
時たま、奥の陸くんに、何か数を確認している様子から、食品の発注でもしているようだった。
そんな彼の姿を視界の先に捉えつつ、彼の作ってくれたご飯を食べていた。
「ご馳走さまでした。美味しかったです」
彼を見て両手を合わせる。
「なら、よかった」
ふと、何かに気がついた彼が前に来ていて、伸ばした手の親指で私の唇の端を拭い、その指を舐めた。