好きって言わせたい〜恋に臆病な彼が本気になったら、溺愛がとまりません〜
3.5章
捕食者〜神崎 透〜の苦悩
井上 愛梨
彼女と出会ったのは、雨あしが強い日だった。
客も雨の中来ないので、バイトを帰し、誰も来ない外を眺めていた時、大雨の中、傘もささずにびしょ濡れで歩く女を見つけた。
それが彼女だった。
普段なら、見て見ぬふりをするのに、なぜか気になって傘を持って追いかけて、今にも、倒れそうな後ろ姿を、放っておけなくて声をかけていた。
突然俺に話しかけられた彼女が泣き顔で、俺を見た瞬間、体中に、びびって何か衝撃波が流れた。
なんだこれ…
カミナリが、近くに落ちた時に感じる衝撃のようだった。
濡れた服の代わりを貸してあげたり、彼女の冷えた体を温かいデザートと飲み物で、少しでも温めてあげたいと思ったりと…
もう、この時点で俺的にありえない行動だったが、彼女は、俺の庇護欲を刺激する。
俺に、そんなものがあったなんて、この時まで知らなかったけど…
美味しそうにデザートを食べてくれる彼女の表情に、胸が締め付けられる。
なんだ、これ…
何かわからないまま雨が止むまで、彼女との楽しい会話に心が躍った。
そんなことは初めてだった気がする。
そして、貸した服を返しにきた彼女が外で躊躇ってる姿が、かわいいと思った。