【短編】1冊のノートに彼の言葉

光海「どこが好きなんですか?」

晴也「ずっと考えてたんだけど
分からないんだ。例えばたまに
見せる笑顔がめちゃくちゃ可愛い所とか。
例えば料理の盛り付け方が
めちゃくちゃ上手な所とか。
色々あるけどどれも、これ!って
決め手になるような事じゃない。」

彼は本当に正直な人だ。
そんな胸の内をペラペラと
伝えなくてもいいのに。

晴也「でも、今分かったんだけど
1番好きな所は
美味しいものを美味しいって
言える所だと思う。」

光海「そんな当たり前な事を?」

晴也「ポーズなら簡単なんだよ。
俺が連れてきた店だから
俺に気を遣って目を見て、美味しい!って
喜ぶ振りをするのは簡単だよ。
でも、光海さんは誰に言うでもなく
心の底から美味しいって言ってくれる。
あの日だってそうだった。
賑やかな店内で光海さんの言葉なんて
誰にも聞こえないのに、光海さんは
美味しいって言って笑ってた。
その声が俺にだけは届いた。」

美味しいものを美味しいと言う事を
まさかそこまで褒められるとは
思っていなかった。
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