【短編】1冊のノートに彼の言葉

一命は取り留めた。
でも、その日から晴也は
1ヶ月経っても目を覚まさなかった。

願う事しか出来なくて
無力な自分が心底嫌いで
ああ、彼がいたから私は
ほんの少しだけ自分の事を
好きになれたんだと思った。

彼が何度も好きと言ってくれたから。
彼が何度も幸せと言ってくれたから。
彼が何度も可愛いと言ってくれたから。

彼がいたからこその私だったんだ。

薄いプラスチックの壁の外からしか
会えない、伝えられない。
彼にはもう二度と私の声など
届かないのかもしれない。

光海「晴也、もう1度好きって言ってよ。」

そんな言葉も宙を待った。

ブレスレットなんてどうでもよかった。
彼の命の代償としては
あまりにもちっぽけすぎる。
でも、そんな後悔、今更遅い。
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