【短編】1冊のノートに彼の言葉

彼の意識が戻った。
嬉しくて、その後の言葉も聞かず
私は病室へと向かった。

だけど、彼の病室の周りでは
看護士や医師が慌ただしく
動き回っていた。

光海「あの、晴也は...」

医師「意識を取り戻されたのですが
いつの間にか病院からいなくなって
しまっていて...」

光海「え?」

医師「私たちも懸命に
探しているのですが...」

その日を境に彼は私の前から
いなくなった。

あれから7年と4ヶ月。
23歳だった私は今日
30歳の誕生日を迎える。

写真立てに飾られた彼からの最後の言葉。

彼が残してくれた言葉は
たった一つだった。

『光海、幸せになれよ。』

引きちぎったカレンダーの裏側に
書いてあったその言葉だけが
この7年間の支えだった。

その言葉を今日も大切に胸の中にしまい
私は仕事へと行く。
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