恋愛零度。



そんなことがあって、約束通り、ゾンビの館に入ることになったわけだけど……

「楽しそうっ!」

看板に描かれたゾンビの絵や、中から聴こえてくるおどろおどろしい音楽が、わくわくと想像を掻き立てる。

「そ、そう……?真白がいいなら、俺は全然いいけど……」

「ゾンビに襲われたらどうすればいいんだろう」

「普通に逃げればいいんじゃないかな……?」

私とは対照的に、明らかに顔から血の気が引いていく桐生くんに、なんだか悪い気がする。

苦手ってわかっててわざと誘うなんて、やっぱり意地悪だったかな。

「次の人どうぞー」

呼ばれて、中に入った。

館の中は汚れたアンティーク風の置物や照明を落としたライトなどで不気味な雰囲気を醸し出している。

そこへ、壁の小窓が急に開き、血だらけのゾンビがぶらりと垂れ下がる。

「ぎゃっ!?」

桐生くんが、後ろに飛び退いた。

「へえー、よくできてるなあ」

私はまじまじと仕掛けを見つめる。

「まま、真白、冷静に観察してないで早く行こう……?」

ガクガク震える桐生くん。

ごめん。なんだか、ちょっと楽しくなってきちゃった。


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