恋愛零度。
「あー、楽しかった」
無事に館から脱出して、私はなんだか本当に冒険をしてきたように、心が弾んでいた。
「すごいな、真白は……」
桐生くんは、すっかり脱力していたけれど。
戻ってきた三好さんたちと合流して、お昼ご飯を食べることにする。
フードスタンドの列に並んでいるとき、由良くんが、そっと耳打ちしてきた。
「ね、楽しかったでしょ?」
約束のことなんてすっかり忘れて楽しんでいた私は、どきりとしながら、うん、と頷いた。
「なんの話?」
桐生くんが不思議そうに訊いてきて、
「なんでもないよ」
私は慌てて答えた。
由良くんに、ひそかに感心しながら。
……わかってたんだ。
暗闇のなかで、私が思わず、桐生くんの手を取りたくなることを。