恋愛零度。
「まずは石だな。大きすぎても小さすぎてもダメなんだ」
と桐生くんはレクチャーをはじめた。
石なんてそこら中にたくさんあるし、どれも同じように見えるけれど、桐生くんが言うには「全然違う」らしい。
「円盤みたいな形で、真ん中がふくらんでるのがいちばんよく飛ぶんだ」
こういうの、と桐生くんが無数の小石のなかのひとつを手にとって、水色とオレンジ色が薄く混じり合う空にかざした。
ただの小石が、光を反射して、宝石みたいに光って見えるから不思議。
「じゃあ、これは?」
「あ、いいね」
いつのまにか、石探しに真剣になっていた。
結果、合わせて10個の円盤型の小石を見つけだした。表面がすべすべしていて、触り心地がいい。
2人並んで川べりに立つ。
「じゃ、せーのでいくよ」
「う、うん」
「せーのっ!」
思いっきり腕を振りかぶって、石を投げた。
桐生くんの投げた石はきれいな線を描きながら、ぴょん、ぴょん、ぴょん、と10回以上も跳ねて、最後のほうは光に吸い込まれるように見えなくなった。
「すご……」
反対に私のは、1度も跳ねることなく、無残にも水の中に消えてしまった。
「ぷっ、ほんとに下手だ」
「だから、最初に言ったでしょ……」
私はふて腐れながらつぶやく。