恋愛零度。
「真白、手に力入れすぎ」
桐生くんがそう言って後ろにまわり、私の手を取った。
どくん、と音が聞こえるくらい大きく、心臓が跳ねる。
こうやって、急に距離を詰めてくるから、反応に困るんだ。
平常心、平常心……!
心のなかで念仏のように唱えている私なんてお構いなく、
「まず握り方は、人差し指と親指でスナップがきくように……」
と本気の指導をする桐生くん。
「そうそう、もうちょっと腰低くして、足開いて」
「な、なんかこの体勢、かなり恥ずかしいんだけど……」
「あ、いいね、様になってきた」
言いながら、スマホを構える。
「撮影禁止!」
「あはは」
「……もう」
本気なんだかからかっているんだか、たまにわからなくなる。