恋愛零度。

「水面と平行に」

「もっと回転させて」

「角度を浅くして」

スパルタ特訓のおかげで、なかなかサマになってきた。

なにをこんなに真剣にやっているんだろうと、冷静になるとちょっと恥ずかしくもなるけれど。

投げた小石が、勢いよく水を切って飛んでいくのを見て、そんな恥じらいも、一緒に飛んでいった。

「すごい、13回!桐生くん抜いたっ!」

私はガッツポーズをしながら振り向いた。

「く……やるな」

桐生くんはは本気で悔しそうにする。

「まあでも俺、最高記録20回だし?」

「なに対抗してんの」

私は笑った。

昔できなかったことが、ひとつずつできるようになる。

どうしてかなんて、考えなくてもわかる。

ーー成長したからだ。

ふいに、言いようのない寂しさが、奥のほうから込みあげてきた。

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