恋愛零度。
*
「送ってくれてありがとう」
「うん。じゃあ、また明日」
家の前で、桐生くんと別れた。
楽しかったな、と家の中に入って思った。楽しくて、忘れられない1日になった。
「いつまで玄関に立ってんの、あんた」
「わっ、お姉ちゃん」
急にお姉ちゃんが部屋のドアを開けて顔を出すから、ビクッとした。
「お、お母さんは?」
「まだ仕事。先食べててだって」
「そっか」
お母さんは、最近、帰る時間が遅い。休日も返上で働いてることも少なくない。
大丈夫かな、と少し心配にもなるけれど、なにか手伝おうとすると、「大丈夫よ、これくらい」とお母さんは言うから、やっぱり私は見ていることしかできないんだけど。
「さっきの男、誰?」
ふいに、お姉ちゃんに言われて、私はギクリとした。