恋愛零度。



「送ってくれてありがとう」

「うん。じゃあ、また明日」

家の前で、桐生くんと別れた。

楽しかったな、と家の中に入って思った。楽しくて、忘れられない1日になった。

「いつまで玄関に立ってんの、あんた」

「わっ、お姉ちゃん」

急にお姉ちゃんが部屋のドアを開けて顔を出すから、ビクッとした。

「お、お母さんは?」

「まだ仕事。先食べててだって」

「そっか」

お母さんは、最近、帰る時間が遅い。休日も返上で働いてることも少なくない。

大丈夫かな、と少し心配にもなるけれど、なにか手伝おうとすると、「大丈夫よ、これくらい」とお母さんは言うから、やっぱり私は見ていることしかできないんだけど。

「さっきの男、誰?」

ふいに、お姉ちゃんに言われて、私はギクリとした。
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