恋愛零度。
「あのね、私の友達の話なんだけど……」
私は名前を伏せて、昨日のことを話した。
友達に好きな人がいて、その子の親友と好きな人が一緒にいるところを見てしまったーー
私の友達なんて、2人しかいないんだから、誰の話なのかなんて、わざわざ言わなくたってバレバレだろうけど。
それでもあえて訊いてはこない桐生くんの優しさに、私は感謝した。
「そっか。そんなことがあったんだ……」
桐生くんはいつものように自販機のカフェオレを飲みながら、難しそうな顔をする。
「真白は、誰を信じたい?」
「……わからない」
私はぽつりとつぶやいた。
本当は、誰のことも、疑いたくなんてない。
だけど、この目の前で見てしまったから。
あのときの、三好さんの悲しそうな表情を思い出すと、いたたまれなくて、胸がじくじくと痛む。
少し前までは、人のことで、こんなふうに胸を痛ませることもなかった。
だけどいまは、そのことで頭がいっぱいになっている。
知らなかった感情が生まれて、どうしたらいいかわからないんだ。