恋愛零度。



それ以来、私は、自販機には近づかなくなった。

教室移動のときも、遠回りをしてでも3組の教室の前は通らないようにした。

とにかく私は、顔も知らない「桐生蒼」から、必死に遠ざかろうとした。

私の下駄箱に、謎の手紙を置いていった人。

なのに、あれから2週間経っても、なにも起こらない。

……やっぱり、ただのイタズラだよね。

なんだか罪悪感を感じて、捨てるに捨てられなかった手紙。

手元にあるから、考えてしまうんだ。

家に帰ったら、さっさと捨ててしまおう。

考えるのも馬鹿馬鹿しくなって、あんな手紙のことはもう、なかったことにしようとした。


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