恋愛零度。

「でも、由良くん、私の友達と付き合ってたから、言えなかったの。由良くんね、その子のこと大好きで、すごく一途に思ってて、それがうらやましくて……」

最初から、叶わない恋だった。

友達の彼氏だから、好きになっちゃいけないから、必死にそう言い聞かせて、諦めた。

「中学を卒業する前に、その子がほかに好きな人ができたって言って、由良くんを振ったの。それから、由良くん、いろんな女の子と遊びだして、ああ、変わっちゃったんだ、昔の一途だった由良くんはもういないんだって、勝手に思って諦めてた。クラスも違うし、会う機会もなかったしね」

そしてある日、三好さんから、由良くんのことが気になると打ち明けられた。

「びっくりしたけど、もう平気だって思ってた。もう全然好きじゃないし、千夏ちゃんのことを応援できるって」

だから、あの日ーー由良くんが中庭にやってきたあの日、偶然見かけて、2人でこっそり後をつけた。

「そしたら、唯川さんと桐生くんまでいるから、びっくりしちゃった」

渡辺さんが思い出し笑いをして、私は少し恥ずかしくなった。
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