恋愛零度。
9.『忘れて。』
12月の午後ーー、
「デートがしたい……」
三好さんが、机に顔を突っ伏して、そんなことをつぶやいた。
「どうしたの千夏ちゃん、発情期?」
と渡辺さんが壁にもたれかけてジュースを飲みながら言う。
「……人を盛りのついた猫みたいに言わないでくれる?」
「クリスマスだからねぇ〜」
「そう!まわりカップルだらけだし、のんびりしてたら由良くんだって……」
「じゃあ、告白したら?」
「そ、そんな簡単に言わないでよおー」
「告白なんて簡単だよー。好きって言うだけだもん」
「亜由に告白してくる顔しか見てない男どもと一緒にしないで」
「じゃあ、由良くんのどこが好きなの?」
「う〜ん……ぜんぶ?」
そんな恋愛モード全開な女子トークを完全にスルーして、私は黙々と勉強に励んでいた。