恋愛零度。
お姉ちゃんは乱雑に服が詰め込まれたクローゼットをごそごそ漁って、
「これでいい?」
とハンガーからシャツとジャケット、それからスキニーパンツとふわふわのマフラーを貸してくれた。
「ありがとう!でも、いいの?」
言い訳を用意していた私は、拍子抜けしてしまった。
「べつに、いまどこも出かけないし。体系がほぼ同じだから、サイズは大丈夫だと思うけど」
そう言って渡してくれたそれは、シンプルで、すっきりとしていて、柔らかい。私が持っているような安物じゃなくて、ちゃんとしているのだと手触りでわかる。
意外だった。お姉ちゃんが普段家で着ている服では、見たことがないものだったから。
神経質お姉ちゃんが、自分の服を文句も言わずに貸してくれたことは、もっと意外だったけれど。