恋愛零度。
「ほら、ここ、つかまって」
桐生くんが腕を差し出してくれて、私はおずおずと手を伸ばした。
「あ、これ滑りやすい……!」
「でしょ?」
そう言ってにっこり微笑む余裕ぶりは、やっぱりどう考えても、初めてには見えない。
桐生くんが私の前を滑って、私が後をついていく。
ーーすごい。すいすい滑れる……!
君の背中を追って、手をとっていると、なんだか自分がうまくなったような気分になる。
手をちょっと広げて、片足をあげてーー
……あれ?手、離れてる?
そのとき。
「ぅぎゃッ!?」
「あ……」
ぐきっ、とスケート靴の刃が倒れて、私もそのまま横に転んだ。 その拍子に、氷の地面に思いっきり尻もちをついてしまった。
「いたたた……」
「さりげなく離せば、そろそろいけるんじゃないかと思ったんだけどなあ」
ちょっと早かったか、と笑いながら言う桐生くん。
「自転車の練習してる小学生じゃないんだから……」
レベル的には、似たようなものかもしれないけれど。