恋愛零度。
*
薄暗くなってきた街中の真ん中に立つ大きなツリー。
無数に散りばめられた電飾の灯りが、一斉に灯った。
わあ、と歓声があがる。
「俺、点灯するところ初めて見た。こんなふうなんだ」
「うん、私も……」
イルミネーションなんて、冬の景色の一部だと思っていた。
街を歩けばごく普通にあるもので、所詮はただの電気だって。
だけど、無数の灯りが、あたりを一瞬にして煌めかせ、人々の目を惹きつける。
わざわざそこに足を運んで見る人がいる。
きれいなものを見たくて。そのなかに自分も入ってみたくて。
初めて、わざわざ見に行きたいと思ったんだ。
ほかの誰でもなく、君と一緒に。