恋愛零度。



薄暗くなってきた街中の真ん中に立つ大きなツリー。

無数に散りばめられた電飾の灯りが、一斉に灯った。

わあ、と歓声があがる。

「俺、点灯するところ初めて見た。こんなふうなんだ」

「うん、私も……」

イルミネーションなんて、冬の景色の一部だと思っていた。

街を歩けばごく普通にあるもので、所詮はただの電気だって。

だけど、無数の灯りが、あたりを一瞬にして煌めかせ、人々の目を惹きつける。

わざわざそこに足を運んで見る人がいる。

きれいなものを見たくて。そのなかに自分も入ってみたくて。

初めて、わざわざ見に行きたいと思ったんだ。

ほかの誰でもなく、君と一緒に。

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