恋愛零度。
一瞬、空気が止まった。
ーー好き。
その言葉の意味を理解して、動揺する。
いやいや、たしかに手紙にもそう書いてあったけど……
「えっと、冗談ですよね……?」
「本気だよ。冗談でこんなこと言わないから」
きっぱりと、否定されてしまった。
「そんなこと……いきなり言われても、よくわからない」
「そっか、ごめんね。こういうの、慣れてなくてさ」
と彼は頭を掻きながら、形のいい眉を下げて困ったような顔をした。
その瞬間、ふいに、その大人っぽい顔立ちが、幼くなる。
そして、制服の下からすらりと伸びた白い手を差し出して、言った。
「唯川さん、俺と付き合ってください」