恋愛零度。
空は淡い薄紫色で、長細い雲がいくつも横切るように浮かんでいる。
ツリーの点灯式は、夜がくるより少し早めの時間だった。それにつられるようにして、夜がやってきたことを知らせるように、街中のイルミネーションが光の波を打つように広がっていく。
それはすごく、幻想的な光景だった。
雑踏も、まわりに人がいることも、ほんの一瞬、忘れてしまうくらいに……。
「真白」
桐生くんが名前を呼んで、私は顔をあげた。