恋愛零度。



その日、お母さんは、目を覚まさなかった。

お姉ちゃんが先に帰ったあと、病室で、お母さんのベッドのそばに座って、その顔をじっと見つめながら、

「よっぽど疲れてたんだね……」

私は小さく、そう語りかけた。

普段は気づかないけれど、こうして近くでよく見ると、頰が痩けて、目元の皺も増えた。

仕事も家事も完璧で、疲れを感じさせないくらいパワフルなお母さん。だけど最近は、ちょっと無理しすぎじゃないのかなって、心配だった。

どうしてお母さんは、もっと頼ってくれないんだろう。

たった3人の家族なのに。もっと頼りにしてくれればいいのに。

起きてるときより寝てるときのほうが疲れて見えるなんて、無理してる証拠だよ……。

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