恋愛零度。
*
その日、お母さんは、目を覚まさなかった。
お姉ちゃんが先に帰ったあと、病室で、お母さんのベッドのそばに座って、その顔をじっと見つめながら、
「よっぽど疲れてたんだね……」
私は小さく、そう語りかけた。
普段は気づかないけれど、こうして近くでよく見ると、頰が痩けて、目元の皺も増えた。
仕事も家事も完璧で、疲れを感じさせないくらいパワフルなお母さん。だけど最近は、ちょっと無理しすぎじゃないのかなって、心配だった。
どうしてお母さんは、もっと頼ってくれないんだろう。
たった3人の家族なのに。もっと頼りにしてくれればいいのに。
起きてるときより寝てるときのほうが疲れて見えるなんて、無理してる証拠だよ……。