恋愛零度。
桐生くんは私の目をじっと見つめて、それから伏せた。
それを言うべきか、迷っているみたいだった。
だけど、意を決したように顔をあげて、言った。
「あるよ。3年前に」
「…………っ」
3年前ーー奏多が入院していた年だ。
そして、その半年後、奏多はいなくなった。
私の知らない場所に行ってしまった。
「……奏多のことを、知ってるんだね」
その名前を口にした瞬間、涙も一緒にこぼれた。
「知ってるよ。よく、知ってる」
「教えてよ。奏多がどこにいるのか教えて!」
私は、桐生くんの前にひざまづいた。
「真白……」
「私、ずっと待ってた。あの場所で待っていれば、奏多は来てくれるんじゃないかって……」
この3年間、毎日。
マロンを連れて、あの場所に行ったよ。
そうしたら、君があの頃みたいに、笑ってひょっこり現れる気がした。
馬鹿みたいに、そのときを待ちわびていた。
いつかきっと、またここで会えるって。
そう信じて。
「……でも、奏多は来なかった。一度も、会いになんて来なかった……だから、あの楽しかった毎日は、全部夢だったんだって……っ」
桐生くんがしゃがんで、私を抱き抱えるようにする。
「夢じゃない」
君は辛そうな声で言った。