恋愛零度。

「ねえ、なんでみんな隠すの。お姉ちゃんも、桐生くんも、知っててなんでーー」

「言うなって言われたからだよ」

桐生くんは言った。

「真白にだけは絶対に言うなって、あいつが言うから、言えなかった」

「……なんで?」

なんで私だけ?

少し考えて、すぐにわかった。

ーーああ、そっか、私が、弱いからだ。

「真白、きいて」

桐生くんは、身体を離して言った。

「……俺、君に、隠してたことがある」

うん、と私は小さく頷く。

怖かった。本当のことを、君の口から訊くのが。

君が私に言っていないこと。隠してること。そして、涙の理由。

気づいていたのに、訊かなかった。

あのときみたいに……

だって、隠すのは、簡単に言えないってことだから。

それを知ったら、なにかが変わってしまう気がしたから。





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