恋愛零度。


私があの手紙を受け取った日の前日ーー

桐生くんは、奏多の病室に行った。

お願いがある、と奏多は言った。

『直接じゃなくてもいいから、真白にこれを渡してほしい。ぼくからの、最後の手紙』

『最後?』

『僕、もうすぐ死ぬんだってさ』

ひとごとみたいに言うから、なにかの冗談だと思った、と桐生くんは言った。

でも。

それから間もなく、奏多は本当に、死んでしまった。



< 217 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop