恋愛零度。
結局、私は昨日、桐生くんの話を最後まで聞けなかった。
あまりにショックが大きすぎて、やってきたバスに、飛び乗った。
自分から教えてと言ったのに、逃げたんだ。
だけど、それ以上聞いていたら、頭がどうにかなってしまいそうだった。
だって、ずっと、ずっと待ってたんだよ。
なのに、もう二度と会うこともできないなんて……。
「意味わかんないよ、奏多……」
私は手紙を見つめながらつぶやいた。涙がぽたりと落ちて、そのきれいな字をにじませた。
短い手紙。きれいな字。
意味不明だけど、すごく奏多らしくて、また泣いてしまう。
奏多は、きっと、私を悲しませたくなかったんだ。
だから、最後の最後まで、病気のことを言わなかった。
だから、一度も会いに来なかった。
その代わりに、こんな手紙を書いて、桐生くんに渡したんだ。
馬鹿みたい。こんなの普通じゃないよ。
だけど、すごく、奏多がしそうなことだ。
奏多はいつも、人のことばかり考えていたから。
私が弱いから、ほっとけなかったんだ。
『これからはいつでもそばにいられるわけじゃないから』
……あんなこと言ってたくせに。
ずっと、遠く離れても、心配してくれていたんだ。
だからってーー、
「めちゃくちゃだよ、こんなの……」
そんな気を遣われるより、私は、奏多に会いたかった。
辛くても、それでも、もう一度、会いたかったんだよ……。