恋愛零度。

なにもしない、なにも考えないでいると、お腹も空かなくて、生きている心地がしなかった。

ただぼうっと、窓の外の雨音を聞いていた。雨は弱くなったり強くなったりしながら、一日中振り続けた。

時間の感覚がなくて、私はベッドのうえで座ったまま、うつらうつらしていた。

起きているのに、夢を見た。

白昼夢だーーぼんやりと私は思った。

薄青い霧のなか、誰かが手を振っている。でも輪郭が曖昧で、それが誰だかわからない。

不思議な感覚だった。まるで空気を固めてできた人形と向かいあっているみたい。

その人が、私に向かって手招きをする。

こっちへおいでと言っている。

ーーあなたは誰?

そう尋ねてみるけれど、答えはわからなかった。















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