恋愛零度。


「1週間、入院することになったわ」

とお母さんが言った。

病院の寝巻き姿のお母さんは、普段見るよりずっと痩せこけて、疲れているように見えた。

「それで、家を空けてる間、心配だから、叔母さんに来てもらうことになったのよ」

「叔母さん?」

私は驚いて言った。

なんでいきなりそんな話に……?

「そう、さっきお願いしたら、来てくれるって。申し訳ないけど、仕方ないわよね」

「……なんでそんなこと、相談もしないで勝手に決めるの?」

「ちょっと、真白」

お姉ちゃんが咎める口調で言うけど、一度堰を切った言葉は止まらなかった。

「私たち、もう高校生だよ。面倒見てもらわなきゃいけない子どもじゃないんだよ。何でもかんでもひとりで決めないでーー」

ーーパンッ

頰に衝撃を受けた。

「…………っ」

一瞬、なにが起こったのかわからなかった。

じわりと頰に痛みを覚えて、やっと、お姉ちゃんに叩かれたんだとわかった。

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