恋愛零度。



お姉ちゃんが帰ってきて、私の部屋のドアをノックする。

「叔母さん、来ないことになったって。あんたが余計なこと言ったせいで」

お姉ちゃんが不満げに顔を歪ませて言った。

「来てくれるって言ってるんだから、来てもらえばいいじゃない。あたしだって勉強しなきゃいけないし、あんた家事なんてできないでしょ」

「……できるよ」

私は不貞腐れてつぶやく。

自分でも、幼稚だなと思う。意地はって、できもしないことをできるなんて言って。

まるっきり子どもだ。

「あっそ。勝手にすれば。私はやらないから」

バタン、と起こって出て行った。

家事くらい、その気になればできるはず。

普段、お母さんがやっているのと同じことをすればいいだけなんだから。

だけどーー、

「……なんで?」

カレーを作ろうとしたけど、野菜もお肉も、見事に全部焦がしてしまって、とても食べ物とは思えない代物になってしまった。

結局、夜ごはんは、あたためてご飯にかけるだけのレトルトカレー。

ご飯を食べている間、お姉ちゃんも私も、ひとことも話さなかった。

テレビもつけずに、部屋はお墓みたいに静まり返っていて。

ひとりじゃないのに、ひとりでいるときより寂しいなんて……

こんなの、初めてだった。




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