恋愛零度。

「ていうかお姉ちゃん、男嫌いって……」

「振られてから嫌になったのよ。こんなに辛い思いするくらいならもう誰も好きになるもんかって」

「辛かったの?」

そう言うと、お姉ちゃんはそっと苦笑いをこぼした。

「そりゃ、辛いでしょ。むしろ振られても辛くないなら、たいしたことなかったってことよ」

「へええ……」

「へえってなによ、馬鹿にしてんの?」

「や、してないけど」

「だって振られて傷ついたのに関係ないとかどうでもいいとか、馬鹿みたいじゃない」

「いやだから、そんなことひとことも言ってないって」

お姉ちゃんに、そんな感情があるなんて、知らなかった。
いつだって強くて、正しくて、ブレなかったお姉ちゃんが、人を好きになったり、傷ついたりするなんて。
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