恋愛零度。




病室のドアを開けると、お母さんは私を見て、

「真白、あんた、学校休んでるんですって?」

と開口一番、咎めるような口調で言った。

そんなことを告げ口するのは、お姉ちゃんしかいない。

「……いいでしょ、こんなときくらい」

「よくないわよ。みんなから遅れをとったらどうするの」

「いいの、こんなときくらい」

私はそう言って、家から持ってきたりんごと果物ナイフを取り出した。

でも、りんごの皮むきなんてしたことがないから、全然うまくできない。危うく指を切りそうになって、りんごを床にゴトンと落とした。

「……真白、もしかして笑わせようとしてる?」

「真剣なんだから邪魔しないで」
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